「千愛(ちな)! 千愛!」


「……へっ?」


「へっ? じゃないよ、号令!」


ふっと気が付いたら、親友の水希(みずき)の顔が間近にあった。


今日もマスカラで綺麗に睫がセパレートしてるな。



なんて思いながら頬杖から手を離すと、何故か水希の唇が尖ってた。



なに怒ってるの?



聞こうとした瞬間、


「渋木~。目を開けたまま寝るな」



教卓には見慣れた担任の呆れ顔と、クラス中の視線がわたしを凝視している。



視界の隅では、円い壁掛けの時計がホームルームの時間を差していて……、


「あっ!」


思わず席から立ち上がった。



しまった……。
大好きな男の子を思い出してつい、ぼんやりしてしてたみたい。



「おいおい。クラス委員が号令無しで立ち上がんなよ」



斜め後ろから聞こえた周助(しゅうすけ)の茶化した声で、クラスがどっと笑い声で沸く。



朝からボケボケの大失敗で顔が真っ赤になった。



うぅ……恥ずかしい。