「そ、そっか……気にしないで、顔あげてっ」 高瀬くんの声で、わたしは顔をあげた。 つくづく自分は馬鹿だと思う。 好きな人…が、居るわけでもないのに…。 居るわけでも、ないのに。 「ごめんね…高瀬くん」 「気にしないでって! …けど、ひとつだけ頼んでい?」 「うん…何?」 「俺、ずっと好きでいてもいい?」 「…うん、ありがとう」 わたしがそう答えると、高瀬くんは笑顔で「こちらこそありがとう」と言って、階段を降りていった。