(何よっ)
早く言えばいいのに
陥(おとしい)れようとしてましたって
この印籠を渡される前のような状態がずっと続いてるのが辛い
「私の事、裏切ったんでしょ……?」
それだけ言うのが精一杯で
言葉を切った私の目からは涙がぽろりと零れて雫になった
「……!」
ポーカーフェイスの松井が見るからに焦っている
わかってる
松井は女の涙とかきっとすっごく苦手
でも そんなの知らない!
私だって
すっごい傷ついてる
泣かせたくないんなら早く言い訳しなさいよ!
「私は…お…俺は……」
松井は見開いた瞳のまま、睨み付けている私をまっすぐに見つめ
ツカツカと近づいてきた
「優月さ…あなたを……君を、裏切ったりなどしない」
言葉はぐだぐだだったけど
松井の手は迷いなく私の肩に回されその胸に引き寄せられた
「俺は君を守りたい
君を傷つける物、全てから……」



