【恋に師匠無し】



先代、先々代、教えて頂いたことは一つも溢さず受け継いだつもりでした。


店の常客も増え品も良くお客様も大層満足そうです。

手伝いの者達とも仲は良好であります。


もう知ることなどないとばかりに世間の善かれ悪かれ見てきた次第です。


ただ一つ、御先祖様の代から受け継がれなかった教えが私を苦しめます。


教えてくださりませんか?

駄目でしょうか?


私だけでしょうか?


周りの者に聞くのは耐え兼ねます。





「おはようございます」


君は気にもせず歯を見せて笑うから

「あ、…」

思わず挨拶が遅れてしまいます


淡い淡い色水がただようように
濃厚な色を足しながら
私の心は染まってゆくよ


「おはようございます、いいお天気ですね」