あたしは今、父の知り合いが管理するアパートで独り暮らしをしている。

 大変と云えば大変だけど、父の遺産でどうにか生活は出来ているし。

 何より、管理人さんはとても優しくて頼りになる人だし。

 あたしに不自由なんて、無い。

 むしろ恵まれてるんだ。

 そう思っていないとダメな気がする。

 エントランスに入って階段を昇ろうとしたとき、管理人さんの娘さんが降りてきた。


「おかえり、華南子ちゃん」


 一つ年上の莉奈さんは凄く優しくて、本当のお姉さんみたいな人。