勝手に煩くなる鼓動に気付かないふりをして。 前を見詰める先生を見てみようと少し躰をずらすと、そこには本を読んでいる時と同じ顔をした先生がいた。 更に大きくなる鼓動。 あたし、どうしたんだろう。 この鼓動が、先生に気付かれてしまわないだろうか。 それしか考えられなかった。 信号で止まったとき、不意に先生があたしを振り返った。 『ちょっとだけ、寄り道していい?』 『いいですよ』 コンビニにでも行きたいのかな。 反射的に返事を返して、冷え切ってしまった手指を擦る。