『……じゃあ、お願いします』 『ちゃんと捕まってろよ』 言われるまま肩に手を置いたら、それじゃ危ない、と手を引かれ、先生に抱きつく格好になってしまった。 何だか、恥ずかしいんですけど。 けたたましいエンジン音を上げて、バイクは走り出す。 まだ秋口とはいえ、風を切って走っていくから体感温度は結構寒い。 歩くだけだったら十分だったパーカーも、あまり役に立たない。 だからあたしは、そっと、抱きつく腕に力を込めた。 先生の背中が、思ったよりも暖かかったから。