『先生?』
声を掛けると驚いた風に肩を跳ね上げ、『ごめんな、華南子っ』と、慌てて謝ってきたことがあった。
照れ臭そうに、『集中してると周りが見えなくてさ』と、言っていたけど、それはいつもの事らしい。
他の子が席に行くと、いつもそんな感じ。
珍しく反応があっても非常に素っ気なくて、心ここに有らず、といった風だとか。
それは、すなわち、あたしが行くと気付いて貰える、ということで。
周囲をシャットダウン仕切っている先生の意識の中に入れるのは、あたしだけ、ということで。
それを『特別』以外のなんと解釈すれば良いのだろう。
でも、あたしはもう一つ気付いた。
どうしてあたしは、こんなにも先生の事を意識しているのか。
これじゃあまるで、好意を寄せる女の子たちと同じじゃない。
そのころのあたしは、自分の気持ちに凄く戸惑っていた。


