時掛の言葉を反芻してみる
  。本当はそんな手間も必要
 も無かったのだが 、時間が
 欲しかった 。

 「 無意識に僕は… 」

 時掛の見下す様な視線 。
 光のある方に顔が向けられ
 ないのは 、時掛が居るから
  ?それとも 、自分が影だと
 知りたくないから ?

 「 君 の 心 を… ? 」

 時掛が笑う 。

 鈴守は何故だかそれに恐怖
 を抱いて後退った 。
 コツコツと時掛の足音が近
 付いてくる 。カシャンと剃
 刀を踏みつけて 、鈴守の顔
 を上げさせる 。

 「 …ッ 」

 細くて長い時掛の指が鈴守
 の顎に絡んで 、でも尚時掛
 は冷たい目をしたままだっ
 た 。

 「 ──と 、時掛…っ 」

 鈴守は体を目一杯引いて顎
 もを引くが 、時掛の指は離
 れない 。

 「 君はいつの間にそんなエ
 ロティシズムになったのか
 な… ?僕には判らないよ 」

 鈴守の言葉にようやっと時
 掛の目が穏やかになる 。

 其処で油断したのだ 。
 鈴守が離れようとしたのを
 時掛は許さなかった 。指を
 剥がそうとした右の指を掴
 んで床に縫いつける 。

 鈴守から困惑と焦燥が窺え
 た 。