「ねぇ、キスの味ってあるのかなぁ?」

「…無い、と思うケド」

少し夢見がちなアタシの親友は、少女マンガ雑誌を見ながらぽや~としている。

昼休み、学校の中庭でお互いに読書をしていた。

彼女はマンガ雑誌を、アタシは数学の参考書を読んでいたのだが…。

「昔はレモン味だって言われてたのよねぇ。甘酸っぱいって」

「レモンはフツーに酸っぱいじゃない」

「んもー! 全然夢が無いわね」

「あってどーする? 実際そうじゃなかった時の落胆が激しいだけでしょ?」

「夢が無いなんてサビシイわねぇ」

「余計なお世話よ。それより現実逃避はよくないわよ」

そう言ってアタシは自分が見ていた参考書を振った。

「高校受験は夢では何ともならないわよ」