“ターゲット逃亡”


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降り積もった雪が辺り一面を覆いつくし、足がとられてすぐに追い付かれる。



「離して?」

「俺から逃げようだなんていい度胸だな?」



彼の指が私の髪を絡めとると、口元に近付けてキスを落とす。



「離してっ」

「ふーん」

「何よ!!」

「さっきは逃げなかったのに?」



寒さに負けずと顔が火照りだす。

図星なだけに言い返すこともできなくて口籠もる。


く、悔しい……。



「もう一回、する?」

「バカ!!」



ついさっき、キスをされそうになって避けなくて。

自分の気持ちがよく分からない。

完全に彼の手の平の上で操られているみたい。



「俺はまだ足りないんだけど?」

「えっ? ……ん、んーっ」



髪に落としていたキスは、再び私の唇を激しく奪う。

快感の波が押し寄せてきて、抵抗する力は次第に抜けていく。


悔しいけど、気持ちいい……。


重なり合う唇の上で舞い降りてきた雪が溶け、体の熱はさらに上昇していく。


ようやく離れた唇に、恥ずかしさでいっぱいになった私は、逃げるようにその場を立ち去った。


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