この時、私は何でその写真を拾わなかったんだろう。
何で訪問者が誰かも確認せずに、無意識に玄関へと向かったのだろう。
後悔したって後の祭り。
何気なく開けたドアの向こう側には、ヒラヒラと舞い落ちてくる雪で埋めつくされた白銀の世界が広がっていて、
「何で、ここが……?」
「さっき言ったじゃん、後でなってさ」
「答えになってないから」
そして、それに負けず劣らない綺麗なヤツが立っていた。
確かにさっき彼は私に囁いた。
“後で”って。
そんな言葉信じろってほうがおかしな話だし。
「……何の用?」
「んー、キスしてくれたら教えてやってもいいけど?」
彼は手を伸ばして私の制服のネクタイを手に掴んだ。
パタンッ――。
ドアが閉まり外界から閉ざされた空間で、彼はさらに体を引き寄せてくる。
私は限界のところまでジリジリと下がる。
見下ろす視線は一秒たりとも逸らしてくれなくて、次第に胸の鼓動が早まっていく。
「着替えておいで」
「は?」
「すぐに行かないなら、ここで襲ってやってもいいけど?」
「き、着替えてくるっ!!」
フッと鼻で笑った彼が手を離し、腕を組んで壁にもたれかかった。
私は慌ててパタパタと部屋に戻っていった。
あれ?
何か彼の思うがままだし。