で、急な引っ越しと言うのは本当だったわけで、私は家に帰るなり山積みにされた段ボールを見て頭を抱えた。


必要最低限のものしか出ていない殺風景な家の中。

ある一部屋にまとめて置きっぱなしの段ボール。


制服を着替えることさえ忘れて、ガムテープを剥がし荷物を取り出す。



「もうっ。お父さん片付けてくれないんだから」



ブツクサ文句をたれながら荷解きを進めていく。


普通はこういう時ってお母さんがしてくれそうなものだけど、今はいないから。

あっ。

いないって言ったって仕事でなんだけど。


つまり、お母さんは仕事の都合がつかずこっちに一緒に越せなかったから、代わりに私が着いていくことになったんだ。

転勤願は出してるって言ってたけど、いつ来れることやら。


はぁーぁ。

出るのはため息ばかり。

勉強に家事にそれだけで手いっぱいなのに。



「白崎春斗……」



あんたなんかに構ってる暇なんてないんだから。

……あっ。



「何だろ?」



お父さんの書籍のさらに下、段ボールの奥底にあった古びた茶褐色の表紙のアルバムを取り出した時に落ちた一枚の写真。


ヒラヒラと舞い落ちて、フローリングの上で裏側を見せているそれを拾おうと手を伸ばす。

それと同時に玄関から音が聞こえた。


――ピンポーン。