私たちは再び公園にやってきた。
彼と初めて出会った公園とそっくりなこの場所に。
「何ですぐ言わなかったの?」
「……思い出してほしいけど、思い出してほしくなかったんだよ」
「何で?」
ふと、ぶっきらぼうに言った彼の顔が赤くなっていることに気付いた。
もしかして?
「あの泣き虫が自分だって知られたくなかったとか? ……アハハッ、可愛いーっ!!」
萌が言っていた通り。
そっぽを向く彼を見て、照れていたんだって分かると可笑しくて。
つい、彼がこんな人だってこと忘れてた。
――ドンッ。
タコの滑り台に押さえ付けられ、雪の冷たさが服越しに伝わってくる。
「……あれから、ずっと好きだったんだけど、悪い?」
「いえ……。一途……です、ね」
「忘れたとは言わせないよ、アイちゃんが言ったこと」
「アハハ……」
彼の顔が近づいてくる。
心臓が口から飛び出しそう。
「約束通り捕まえた、だろ?」
フッと鼻で笑って目を細める。
長い睫毛が目にかかり、雪と吐息が混ざり合う。
私、好きとも言っていないけど。
私を押さえ付けていた手がゆっくりと体を抱き寄せ、唇が触れ合う瞬間、その間に雪が落ちてきた。
ハラハラと舞い降りる冷たい雪は、二人の体温で瞬く間に溶けてゆく。
初めは無理矢理奪われたキス。
だけど彼のキスは極上に甘くて、体を火照らせ次々と雪を溶かしてゆく。
キスを拒まない私も……
いつの間にか彼に溶けていってるのかも。
“泣いたらダメだよ? そんなに寂しいんだったら、いつか私のこと捕まえればいいじゃん! そしたらずっと一緒にいれるしね!!”
そう言ってキスをしたのは、私……だった。
実は私の初恋も、泣き虫で可愛かったあの子だったってことは、当分秘密――。
「惚れた?」
「惚れてない!!」
彼に捕まるのも時間の問題かもしれない……。
【END】

