12月22日――。


頭がボーッとして、ふらつく足取り。

昨日の出来事が夢であって欲しいと願うのみ。


突然の出来事で眠れない夜を過ごした私は、どうやらかなり寝不足気味らしい。



「一体どんな顔して会えば……」



朝一番に着いた教室の前で一人ブツブツ呟きながら、鉛のように重く感じる教室のドアに手をかけた、その時だった。



「おはよ。葵」

「し、白崎くん?」



背後から突然現れて、再び耳元で甘く低い声で囁いてきた彼。

慌てて振り返って顔を覗く。

……夢じゃなかった。


彼の口調と端正な顔立ちを見て、思い出す昨日のキ……

って、ちょっと待って!!
心の準備が。



「あ、あのっ」



だーかーらー、心の準備もできてないってのに、何で話しかけてるのよ私!!


結局、言葉に詰まったまま口をパクパクさせていると、



「白崎くん、おはよ〜!!」

「おはよう、宮崎さん」



他のクラスの生徒が通りかかり、その場は何とか無事にやり過ごせた。

はぁー。

ホッと一息、肩を落とす。


そうしていたら、ガラガラとドアの開く音が聞こえて、



「あれっ? 早坂さん教室に入らないの?」

「え? あっ、入ります」



さっきとは別人のように、優しい口調で私を名字で呼ぶ彼。


これが、

“白崎春斗”

の表の顔だと知ったのは、昨日のあの出来事のせいだ。