「冷てーな」
「な、何して」
「プッ。リンゴみてぇ」
「っ!! もう、離してよ!!」
「ヤダね」
「何でっ、て……し、しっ」
やばい。
彼にも伝わってしまう。
突然力強く抱きしめられてドキドキしていることが。
「なぁ」
「な、に……?」
雲の切れ間から微かに光が差し込み、雪が輝きながら目の前を落ちていく。
それは、立ち止まって抱き締められている体に、どんどん降り積もってゆく。
繋がれている手と抱き締められている体。
冷たい雪は……
今にもこの熱で溶けてしまいそうだった。
「やっぱいいや」
彼はパッと体を離すと、両手をポケットに突っ込んでさっさと歩き始めた。
拍子抜けしてポカンとその姿を目で追って。
な、何よ。
何なのよーっ!!
「ちょっと待ってよ、白崎くんっ!! ちゃんと答えてよ!!」
完全に彼に弄ばれていると感じた私は、慌てて彼の服の裾を掴んでいた。
振り返って見下ろしてくる彼。
負けるもんか。
妙に気合いを入れてジッと見つめる。
「……黙ってないと、その口塞ぐよ?」
「えっ、あっ」
慌てて両手を離して口を覆い隠したら、その様子を見て口角を上げてクスリと笑い、直ぐに視線を前方に戻して歩き出した。
何も言えなくなって、黙ったままその背中を追いかける。
だって……。
彼は何か知ってる。
きっと以前から私のことを……。

