「完璧やな…」

思わず鳥肌が立つ。

こんな奴相手によう勝てたわ、去年の俺。



今年、いくら北くんが伸び盛りでも。

祥太郎には及ばない。



「祥太郎のライディングを見ていると気持ちがいいね」

総一さんは嬉しそうに微笑んだ。

「まだ世界でも通用しそうだ」

そう言うと肩で大きく呼吸をする。



…本当は。

ここで見ているのも辛いはずなのに、そういう事は何ひとつ言わない。



…この人は俺が目指すべき人だな。



今まで、自分に勝ち目がなくても絶対に動揺した姿を見せない人だった。

レースにしても何にしても。

それが周りを安心させる。

監督や代表なら尚更、それが大事。



もっと…

他にも色々。

教えて貰いたかったけど。

そんな時間も、もう僅かしかない。