この想いを君に… −あの場所へ−

8月最後の金曜日。

よく晴れていた。



今日はスポーツ走行。

今年からGP125はJ-GP3という名称に変わり、また来年で2ストロークマシンは廃止となる。

あたしは来年からはST600にスイッチする。

知樹は今のままでいくらしい。



「むっちゃん、知樹!!」

駆け寄ってきたのは智道。

「なんかサーキットでは久しぶりな気がする」

つい先日、家に遊びに来てたけど。

サーキットでは久しぶり。

智道は開幕戦からずっと出ていて、今はポイントリーダー。

間違いなく今年のチャンピオンになると思う。



「おじさん、おはようございます」

智道はパパの前に行って深々と頭を下げた。

「おはよう」

パパは本当に出しにくそうな声を出してやっとの思いで微笑んだ。

智道も笑う。

何だか微笑ましい光景。



…だったのに。



「そーちゃん、なんて格好なの?」

その言葉に場は凍り付いた。