「これ、二つ下さい」


売店のおばちゃんにそう言ってお金を渡すユキ先輩に、私は慌てて声をかける。


「先輩!私、自分で…」

「いーの、後輩は黙って奢られなさい。てか、ジュース一本だし」


先輩は優しく笑い、財布を出そうとした私にオレンジジュースを手渡す。


「すいません。じゃあ…お言葉に甘えて。ありがとうございます」


私の言葉を聞いた先輩は"よろしい"と言って軽く右手を振りながら、自分の教室へと戻っていった。


長い髪をなびかせて歩く彼女の後ろ姿は、本当に憧れてしまうくらいに私を魅了する。


あんな女性になりたい。


初めてそう思わせてくれたユキ先輩に、少しでも近付きたいって思ったんだ。