佳祐のポケットから着信が鳴り響き、その音にハっとした彼はいとも簡単に私を手放した。


「わりぃ…」


そう小さく呟いた後、少しためらいながら電話にでる佳祐の後ろ姿を見つめ、まるで現実から逃げるかのように目を伏せた私。


だって、微かに聞こえてくる甘い声の正体は、きっと彼の大切な愛しい彼女だろうから。


泣きそうな私に気付いた佳祐は、その電話をすぐに切った。


「ごめ…」

「彼女から？」


言いかけた彼の言葉を遮り、そんな事が聞けちゃう自分に驚く。


でも、否定して欲しかったんだ。


"違うよ"って言葉が聞きたくて、わざと聞いたんだよ？

だけど佳祐は、そんな事には気付かない。