「俺、お前の事泣かせてばっかだな」


そう言って、私の頭に頬を寄せる。

壁に背中をつけ、寄り掛かるように私を抱きしめる。


佳祐が、こんな風に私に触れたのは初めてだった。


嬉しさと同時に込み上げる、彼女への罪悪感。

それなのに結局この手を振り払えない私は、やっぱり弱いんだろうか。


「ごめんな」

「いや、私の方が…ごめん」

「何でお前が謝んだよ」


佳祐は困ったように言う。

だって私…彼女がいる事知ってるのに、今佳祐を独り占めしたいと思ってるんだもん。


「ごめんね」


謝る私をそっと離し、佳祐は優しく笑う。


「飯、食い行こうぜ」


その笑顔に、私は涙を閉じ込めた。