「…里ちゃん、絵里ちゃん」


体を揺すられ、目を開ける。


「あれ…ママ。おかえり」


どうやらあのまま寝てしまったらしい私は、寝ぼけながらに答えた。


「カーテン閉めなさい」


そう言われ窓の外を見ると、赤い夕焼けはどこへやら。

映る景色は、黒一色。


一体、どれ位寝ていたんだろう。


確かめようと伸ばした手の中で、タイミングよく携帯が鳴った。

ディスプレイを見る前に通話ボタンを押した私の耳に、すでに懐かしくなっていた人の声が響く。


『絵里?』


名前を呼ばれただけでこんなに胸が高鳴る人を、私は他に知らない。


「佳祐…」

『久しぶり』


本当、久しぶりすぎて言葉が出てこないよ。