「いや、ごめんは私のセリフだよ」


そう告げた後、私はマリに"暇だから行くよ"と笑う。


「今日一緒に帰ろうね」


私の言葉にマリはかわいい笑顔でそう言い、自分の席に戻った。

そんな後ろ姿を見て、彼女を心底羨ましく思った。


窓を開けると、夏の暑さが残る風が頬を撫でる。

佳祐に出会った夏が終わり、新しい季節を迎えようとしているんだ。



ねぇ、佳祐。

今はただ逢いたいよ。



何をどうしたって好きなんだ。


佳祐が見つめる視線の先に、誰がいたっていい。

ただ傍に居たいと思うの。


ブレザーのポケットに入れた鳴らない携帯を握りしめながら、私は佳祐を想った。