「名前、何て言うの?」


とっさに出た言葉と、伸ばした腕。

今しかないって、本当にそう思ったんだ。


「お前みたいな不信な女に、教えられるかよ」


そう言って、彼はハっと笑う。


「どうしても知りたいんだけど。てか、本当付き合いたい」


私の言葉を聞いたマリは、目をパチクリしている。


「お前、やっぱり頭おかしいかもな」

「ですよね…すいません」


手を離して諦めようとしたその時、彼が私を呼び止めた。


「佳祐」

「…え?」

「俺、佳祐っつーの。聞こえた?」


そう言って名前だけ告げると、彼は友達の方へ行ってしまった。