ネクタイで思い出すのは、佳祐。

最後に二人で会った夜、頑張っての想いを込めて渡したネクタイ。


佳祐も離れたどこかで、頑張っているといいな、なんて。

そんな強がりを、綺麗な色をしたカクテルと一緒に飲み込んだ。



だから、目に映る現実は、夢だと思ったんだ。



「おう、来たか」


シュウさんのその声より先に、私の席から見えたその姿と、見覚えのあるネクタイ。


「…嘘」


聞こえない位、小さな声で呟いた私。

そして私の存在に気付いた彼もまた、驚きを隠せずに目を見開いた。


「どうしたんだよ、早く座れよ」


シュウさんの言葉に、弾かれたように視線を逸らす。


「あ…遅くなってすみません」