家に帰ると、見慣れたバイクが目に飛び込んだ。

私の心が小さく悲鳴をあげ、足を止める。

その存在に気付いたバイクの持ち主は、捨てられた子犬のような顔をして口を開いた。


「ちゃんと、話したくて…」


合わせてくれない視線は、後ろめたさからなんだろうか。


「私は、シュンくんと話す事なんてもう何もないよ」


そう言って、何とか前を通り過ぎようとする私の腕を、力強い手が遮る。


「絵里奈ちゃ…」

「触んないでよっ!!」


ミサキちゃんにも、その優しい手を教えたんでしょ?

そんな手で、私に触らないで。


その声に、そっと離された腕。

私は、全身の力が抜ける。


「ねぇ、何で?何で、裏切ったの…っ」


この時、初めて涙がこぼれた。