朝方、しつこく鳴り響く着信音に、少し寝ぼけながら鞄の中を探る。


「…はい」


相手を確認しないで出た事に、今さら後悔した。


『おはよ』


聞き慣れた優しい声に、私の目が覚める。


「…はよ」

『昨日、ごめんな。怒ってる?』


きっと、受話器越しにいるシュンくんは、耳の下がった子犬のようになっているんだろう。


「うん。怒ってる」

『ごめん…』


あれだけ腹が立っていたのに、声を聞くとやっぱり逢いたくなるんだ。


『今日、逢えない?』


本当なら、一緒にチョコレートケーキを食べて、笑い合っているはずだったのに。

そう思うと、唇を噛み締めずにはいられなかったけれど。