シュンくんと適度な距離を保ちながら、私はまた傷付かない道を選んでいる。

何の不安もなく寄り添え合えたら、どんなに幸せなんだろうか。


そんな事ばかり考えながら、ただ時間は過ぎていった。


「上手く出来たんじゃない?」


オーブンの中を覗き込みながら、チカは声を弾ませる。

時間が過ぎるのは、本当にいつの日も早くて。


朝方鳴り響いたチャイムの音で、今日はバレンタインの前日だという事に気付いた。


「絵里奈が、お菓子作るの得意で良かった」


そう言って微笑む彼女に、何だかひどく安心する。


「得意ってわけでもないよ」

「でも、超ー手際良かったし。前作ってくれたクッキーも、おいしかったよ」