月明かりの下ハっと笑うトシが、少しだけ大人びて見えた。


「そろそろ、帰るわ」


"うん"と、悲しい声を出す私に、ため息をつきながら言う。


「あのさ、勘違いしてそうだから言っとくけど…今はチカの事、何とも思ってないからね」


念を押すように、そう言うトシ。


「わかってる…つもり」


それはきっと、私が佳祐を想う気持ちと同じだろうから。

何とも思ってないと言いつつ、特別だと言ったトシの気持ちが、私にはよくわかる。


「つもりじゃなくて、わかってくれよ」


呆れたように笑い、トシは帰って行った。


大切な人達の幸せを、"頑張れる理由"だと言ったトシ。

その強く優しい気持ちに、心を打たれた。