逃げている。


そう言われて口を閉ざしたのは、多分本当の事を言われたからだろう。


真っ直ぐ私を見るトシに、嘘なんてつけるはずがなくて。

だけど、何を口にしたらいいのかわからなかった。

適当な言葉で、伝えたくなかったから。


「ただいま」


無言が続く室内に響いたミっくんの声に、ひどく安心した自分がいた。

"絵里奈ー"と抱き着いてきたチカの腕の中で、私は上手く笑えていたのかな。


「シュン、お疲れ」


トシの言葉に私も顔を上げる。


「よぉ」


目が合った先のいつもと変わらない優しい笑顔に、何だか泣きそうになった。




ねぇ、佳祐。

強くなるって、簡単じゃないね。