「番号、聞いてもいい?」


どこか弱きにそう聞くシュンくんに、私は笑って答える。


「じゃあ、シュンくんのも教えて」

「え、いいの?」

「全然いいよ」


私の言葉に"よっしゃ"と言い、子供のようにはしゃぐ彼の笑顔が素直に嬉しい。


「じゃあ、また連絡する」

「うん、気をつけてね」


番号とアドレスを交換した後、坂道を下っていく背中を見えなくなるまで見送る。

玄関をくぐり、そのままお風呂に向かった。


佳祐の彼女がユキ先輩だとわかっても。

佳祐が私に冷たい視線を向けても。


私は右手の指輪をはずせないでいる。


やっぱり好きだよ、佳祐。

シャワーの雫でごまかすように、静かに涙を流した。