「…ったぁ」


曲がり角で人と衝突してしまった私は、そのはずみで壁に背中をついた。


「わりぃ!大丈夫?」


聞き覚えのある声にハっとし、私は顔を上げる。


「何だ、絵里じゃん」

「佳祐っ!」

「だから、お前声でけぇって」


そう言って笑う彼は、逢いたくて逢いたくて仕方なかった佳祐だった。


「ごめんな、大丈夫か?」

「うん…大丈夫」


思いがけない状況に私は固まるばかり。


「本当に大丈夫?」


大人しい私を見て、佳祐は前かがみになり私と視線を合わせる。

思わず赤くなった私を見て、彼は"バーカ"と笑った。