谷の胸は思いのほか温かくて
心地良い
その背中に手を回して力を込めると
それ以上の力で応えてくれる
それがうれしかった
あたしはここにいる
谷の腕の中に
確かにあたしという人間が存在している
「谷…。
今日、帰る場所ないよ…」
思わずそう言ってしまうと
谷は乱暴にあたしの手を取って
歩き出した
一緒にいたい
それは
愛ではなく
淋しさだ
谷はきっと
気付いていない
「お金…あるの?」
ホテルの入り口で部屋を選ぶ谷に聞く
中学生にとって
ホテル代は大金だ
「心配すんな。
親父の財布からパクってきたばっかだから」
「それ、逆に心配」
「いーから。黙ってついてこい」
空き部屋のボタンを押した後
谷はあたしの手を握った
子どもだと思っていた谷の手は
意外にも大きくて
まるで
男の人みたいだ


