母親は男を欠かしたことがない
娘のひいき目を抜きにしても
美人だし色気があるし
ひかえめで聞き上手な彼女は
夜の街でさぞ魅力的に輝くだろう
彼と出会ってしまったことだけを
呪うしかないのだ
「はじめまして、サツキちゃん」
その言葉が胸をえぐる
無かったことになるのだ
彼とあたしの間には
何もなかった
出会ったのも
今が初めて
あたしが感じた“幸福”も
無になる
「はじめまして。
母がお世話になっています」
お決まりの台詞が
抑揚のない声に乗る
「あたしは出かけるので、ゆっくりしていってください」
それだけ言うと
できるだけ冷静に見えるように
あたしは家を出た


