あたしには変な趣味がある
夜の遅くはない時間に
駅前広場のベンチに座って
駅から吐き出されてくるサラリーマンを
ぼんやりと眺める
仕事を終えて
少しくたびれた顔をして
でも足早に消えていく彼らを見て
そこに幸せな家庭を想像した
あたしの中には全く存在しない父親の影を
そこに見た
嫉妬はしない
淋しさも感じない
もともと父親がいないのだから
当然のこと
それなのにこんなことを続けるなんて
心の奥では求めているというのか
矛盾している
「寒くない?温かいものでも飲もう」
声をかけてきたのは
父親の世代か少し若い年頃
吸い寄せられるように
あたしはその男の横に並んだ


