谷君の家は遠いから
わたしは家まで送ってもらうのを遠慮して
バス停で別れることにした
ここからなら
家まで歩いて10分
「こんなところまで送ってくれてありがとう」
「いーのいーの。
ハルちゃんと長…く…」
谷君が「しまった」みたいな顔をして
自分の口をおさえた
「なぁに?」
谷君はなかなか先を続けてくれなかったけど
しつこいわたしに根負けして
そっぽを向いて早口で言った
「ハルちゃんと長く一緒にいたかったからっ」
う…
うわぁ…
そんなこと言われたら…
絶対みんな恋しちゃうよ
顔が熱い
「じゃあね!バイバイっ」
谷君は自転車にまたがり
逃げるように行ってしまった
わたしは熱いほっぺを両手で覆いながら
「バイバイ」の一言も言えないまま
その後ろ姿を見送ることしかできなかった
谷君…
ずるいよ?