部屋の中はこざっぱりとしていて、あまり派手ではない家具たちは持ち主の性格を表しているようだった。まさか中がゴミ屋敷なんてことは、という心配もまた考えすぎだったみたいだ。
 適当に座ってて、の言葉に従いカーペットに腰を下ろす。落ち着きなく室内を見回すあたしを咎めることもせず、彼女はコートを脱いでキッチンに消えた。
 ふと窓際に目をやって、視線が留まる。木製のフォトフレームが伏せられた形で置いてあったのだ。
 窓の開閉の際にぶつかって倒れたのかな。戻してあげよう、となんの気なしに手を伸ばす。
「カレー」
 唐突に後ろで彼女が声を張り上げた。無防備な全身が驚きで跳ね上がる。
 振り向くと、彼女がマグカップを両手に持ちまっすぐにあたしを見つめていた。