あたしには6歳離れた姉がいる。しっかり者でいかにも優等生気質といった姉はあたしとは正反対のタイプで、幼い頃からよく比較されていた。
 帰宅時間を尋ねる着信に対して、「今日は友達の家に泊まるから」とだけ書かれたメールでの返事。これが姉ならば外泊を渋られるどころか両親からの怒声が飛びかねないが、あたしの場合すぐに受信した返信はシンプルなものだった。
『迷惑をかけないようにするのよ』
 朝はいつも遅刻ギリギリに校門に滑り込み、忘れ物や授業中の居眠りも多く、長期休みの宿題は必ず溜め込む。そのうえ何度言い聞かせてもあっさりと門限を破るのだ。あたしは典型的な手のかかる末っ子だと思う。
 そうして気が付いたときには、両親のあたしに対する教育方針はすっかり放任主義となっていた。