達郎がペンを走らせたそこには

「真夜」

とあった。

「惜しいな」

秀昭は首を振ると、達郎からペンとナプキンを受け取って

「真世」

と書いた。

「名前をつけたのは誰なの?」

「彼女の父親だ」

「大のマヨネーズ好きなんだね」

「当然だ」

「それを知って本人はマヨネーズ嫌いになったというワケだね」

「そういうことだ」

「父親のマヨネーズ好きが高じて真世なんて名前つけられたんじゃ、嫌がって当然だね」

「母親や親戚一同も届けを出してから気付いたそうだ」

「そりゃお気の毒」

「しかしなんだ、大したもんだな、お前は」

「なんだよいきなり」

「オレが用意した問題をオマケつきで解いちまうとはな」

そこまで言うと、秀昭は表情を引き締めた。

「兄さん?」

兄の顔つきが変わったのを、達郎はいぶかしげに見た。

「達郎」

秀昭は弟の顔をじっと見すえた。

「実はお前に、頼みたいことがある」