「佐伯先輩には、呼び出し役だけをお願いしました」

「立ち会い人は頼まなかったわけだ」

「はい」

「まぁ、薄々気付いてはいたけどね」

「僕のことをご存じでしたか」

「一年生に秀才がいるとは聞いてたよ。君のご家族のことも」

「兄とは話したことありますか」

「事情聴取の時に何回かね。とても礼儀正しくて、好感もてる人だった」

「本人にそう伝えておきます」

「そろそろ本題に入ろうか。僕を呼び出した理由は?」

「単刀直入に訊きます」

達郎は一度ごくりと唾を飲んだ。

「馬場先輩が口をつけたジュースに毒を塗ったのはあなたですね」

一瞬、強い風が吹いて、『争いの樹』の葉が激しく音を立てた。



「違いますか江川先輩」