翌日。

達郎は【争いの樹】の下に立っていた。

今は放課後。

時は夕刻を告げ、日の光は【争いの樹】の葉を紅く染めている。

落葉の季節、時折はらりと落ちる【争いの樹】の葉を、達郎はじっと眺めていた。

「この樹がなぜ争いの樹と呼ばれているか知ってるかい?」

そう声をかけられて達郎は振り向いた。

「この学校の創立者は議論好きでね。暇をみては生徒を集め、意見を闘わせていたそうだ」

「この樹の下でですか」

「そう。もう100年以上前の話だけどね」

「その創立者の姿が語り継がれて、この樹が争いの樹という名前になったんですね」

「その通り」

「先輩たちは創立者の真似をしてるわけですか」

「まぁ、そう思ってくれて構わないよ」

その声に、含み笑いが混じった。

「由美に呼び出されて来たんだが、彼女はいないみたいだね」