月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で

達郎はじっと池の水面を見つめた。

達郎と由美の間を沈黙が埋める。

由美が唇をわなわなと震わせた。

「ごめんなさい!」

由美がものすごい勢いで頭を下げた。

「あたし達郎くんのお母さんのこと全然知らなくて…無神経なこと言っちゃってごめんなさい!!」

由美は顔を真っ赤にしていた。

「あたしお父さんが副総監だ、お祖父さんが大臣だ、そんなことばかり言ってて、お母さんのこと知らなくて…それなのに母親ウザくないとか訊いちゃって…」

由美は何度も何度も頭を下げた。

由美の、ウソ偽りない態度だった。

これが演じているなら、アカデミー賞ものだ。

「もういいよ」

達郎は由美に優しくほほ笑みかけた。

「あんた、いい人だな」

そう言われた由美の顔が耳の先まで赤くなった。

「な、なによいきなりアンタだなんて…!」

「タメ口で話せって言ったのはそっちだろ?」

達郎と由美はしばし見つめあった。