「クレープ美味しかったね」

由美は笑顔で言った。

2人はベンチから立ち上がり、池のほとりの柵に体を預けていた。

「これからどこに行こうか?」

由美の声は弾む一方。

いつも清楚な自分を演じている分、今日はのびのびとしているのだろうか。

そう思った達郎は、なぜ自分には素で接触してきたのか訊いた。

すると由美は年下に興味を持ったのは初めてだったからと答えた。

「年下相手だから、変に作ってくよりも、素でいった方がいいかなーなんて思ったのよ」

とどのつまりは気まぐれということか。

「でもなぜ、普段は演じているんですか」

「もう堅苦しいから敬語はやめてよ達郎くん」

由美はそう言いながら

「母親がうるさくてね」

「うるさい?」

「ほらうちの母親って、世間に顔が出る機会が多いじゃない。だからイメージとか世間体を大切にするわけよ」

イメージと世間体は、母親がよく口にする言葉だと由美は笑った。