由美は首を振った。

「エリートって、もうちょっと大人かと思ってたけど、プライド高いだけでダメね。あたし好みじゃないわ」

由美は大人の男性に憧れるているという、自分自身の子供じみた考えには、気付いてないようだ。

そう考えたら達郎は妙に微笑ましい気持ちになった。

「あ、今の笑顔いい!」

由美がはしゃいだ声で言った。

「笑顔?」

どうやら知らないうちに笑顔になってたらしい。

「なんか大人の笑顔って感じ!ね、もう一回笑って、達郎くん!」

笑ってと言われてもそれは無理な注文だ。

しかし由美の顔は、どんどん近付いてくる。

気付けば呼び名も「月見くん」から「達郎くん」に変わっていた。

とりあえず目の前のものに集中しよう。

達郎はそう決めると由美から顔をそらし、手にしていたバナナクレープにかぶりついた。