「貴裕にそれとなく訊いたことはあるわ」

「そしたら何と?」

「エリートに嫉妬したバカな誰かが、毒を塗ったジュースを仕込んだんだろうって」

バカはどっちよと、由美は呆れた口調で言った。

「プライドが高いにも程があるわ」

「佐伯先輩は今回のことどう思ってます?」

「4人の誰かが犯人かもしれないわね」

「その根拠は?」

「4人の手に渡る以前に、ジュースに毒が塗られたとは考えづらいんでしょ?」

天堂か、或いは他の3人から聞いたのだろう。

「だとしたらあの4人の誰かだろうと思ったんだけど、いくら考えても思いつかなくてね」

「もしかしてそれで僕に?」

「あくまでも理由のひとつよ」

由美は茶目っ気たっぷりに笑った。

ずいぶん自分に正直な女性(ひと)なんだなと達郎は思った。

4人の前で清楚な女性を演じているのも、それはそれで、正直さの表れかもしれない。