「全員って、馬場も疑われてるの?」

「自作自演も視野に入れてるってことです」

塗られていたニコチンは決して入手困難な代物ではない。

「タバコ一本あれば充分ですからね」

「だったら馬場の自演もあるかもね」

「だったらとは?」

「だってあの人、タバコ吸うもの」

由美はあっけらかんと言った。

「本当ですか?」

「本当よ。あたし何度も見たもの。さすがに校内じゃ吸わないけどね」

色々あった一か月で知り得たことだろう。

「他の3人は?」

「吸わないわね。確か椎名がお酒を飲むぐらいかな?」

エリート集団といっても品行方正な人物ばかりではないらしい。

達郎は別の質問をする事にした。

「4人の先輩方は、事件のことをどう思ってるんですか?」

「無差別殺人に巻き込まれたと言ってたわね」

「本当ですか?」

「そう思い込もうとしてるだけかもしれないけどね」

「それぞれがそれぞれに狙われたとは思ってないんですか?」