達郎はその人物と視線を合わせると頭を下げた。

相手は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐにほほ笑み返してきた。

「あたしが来るってわかってたみたいね」

この問い掛けにうなずきながら達郎は言った。

「はじめまして【BOW】さん。【luna】です」

この挨拶に、佐伯由美はもう一度ほほ笑んだ。

「あたしが【BOW】だって何故わかったの?」

「確証があったわけじゃありません」

達郎はそう前置きしてから

「【BOW】を日本語にすると弓(ゆみ)。【ゆみ】と言えば…と連想しただけです」

「さすがね」

「佐伯先輩はどうして僕のことを?」

「【luna】って月でしょう?」

「安易すぎましたか」

「自分のこと私、だなんて言って性別不詳にしようとしてたしね。なんか引っ掛かったのよ」

「チャットは前から?」

「気晴しで、たまにね」

由美は茶目っ気たっぷりにウインクした。

「なんかいつもとイメージ違いますね」