「僕に捜査しろと?」

達郎はできるわけないと首を振った。

「犯人を見つけろと言ってるわけじゃない」

秀昭はなだめるように言った。

「事件発生当時の状況が少しでも分かればいいんだ」

それがわかるだけでも捜査は進展する。

「頼む達郎。この通り」

秀昭はテーブルに手をついて頭を下げた。

「…まぁやってみるよ」

達郎が不承不承といった感じでうなずくと、秀昭は喜色満面の笑みを浮かべた。

「いや本当すまん。できる範囲でかまわないからな?」

頼んでおいて何を言ってるんだかと思ったが、達郎は顔や口には出さなかった。

「けど兄さん、大丈夫なの?」

弟とはいえ一般人、しかも未成年者を捜査に介入させようと言うのだ。

「父さんが聞いたらなんて言うか…」

「あ、それなら大丈夫」

秀昭は左手を振った。

「父さんにはもう話を通してある」

「本当!?」

「もちろんオフレコだ」

「当たり前だろ!」