警察は当初、製造工程でニコチンが塗られたとみて、メーカーを中心に捜査を始めた。

しかし捜査が進むにしたがって、事件の様相は変わってきた。

メーカーや自販機の管理会社に、不審な点がまったく見られなかったのである。

さらに捜査を進めるうちに、関係者の証言から驚くべき事実が判明した。

少年たちが買ったジュースは、事件直前まで売り切れていた。

自販機の管理を行なっている業者が、問題のジュースを補充したのは、少年たちがジュースを買う直前。

これは管理会社の業務記録にも残っている。

少年たちが同じジュースを買ったのなら、ジュースの製造年月日等は同じものになるはず。

しかし、4本のジュースの缶を詳しく調べたところ、1本だけ違うものが見つかった。

その1本こそまさに、ニコチンが塗られていた缶だった。

「これで事件の容疑者が絞りこまれた」

「ジュースを補充した管理会社の社員?」

「いいや」

達郎の言葉に秀昭は首を振った。