その喫茶店の隅に少年は座っていた。
手元の文庫本に目を落とし、時折誰かを探すように顔をあげる。
年の頃は15・6歳といったところか。
しかしその瞳には年不相応な憂いの色が浮かんでいて、それが強い印象を与えていた。
「達郎くんじゃないか」
店に入ってくる客の何人かは少年を見かけると親しげに声をかけてきた。
達郎と呼ばれた少年は声をかけてきた1人ひとりに対し、立ち上がり、会釈を返した。
初めてこの店を訪れた客には奇異にうつる光景だったろう。
達郎に声をかける面々はみな背広姿の男。
ある者は眼光鋭く、またある者はいかつい体格をしていた。
堅気を思わせる人間は1人もいなかった。
実際、何人かの客はその光景に好奇の目を向けていた。
しかし喫茶店の店員たちは知っていた。
警視庁の隣にあるこの喫茶店の常連たちが、みな刑事であることを。
男たちは刑事で、少年が警視庁副総監・月見隆司の次男・月見達郎であることを。
手元の文庫本に目を落とし、時折誰かを探すように顔をあげる。
年の頃は15・6歳といったところか。
しかしその瞳には年不相応な憂いの色が浮かんでいて、それが強い印象を与えていた。
「達郎くんじゃないか」
店に入ってくる客の何人かは少年を見かけると親しげに声をかけてきた。
達郎と呼ばれた少年は声をかけてきた1人ひとりに対し、立ち上がり、会釈を返した。
初めてこの店を訪れた客には奇異にうつる光景だったろう。
達郎に声をかける面々はみな背広姿の男。
ある者は眼光鋭く、またある者はいかつい体格をしていた。
堅気を思わせる人間は1人もいなかった。
実際、何人かの客はその光景に好奇の目を向けていた。
しかし喫茶店の店員たちは知っていた。
警視庁の隣にあるこの喫茶店の常連たちが、みな刑事であることを。
男たちは刑事で、少年が警視庁副総監・月見隆司の次男・月見達郎であることを。


